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 結局スーパーで防虫乾燥剤みたいなものを買ってきて一緒に放り込んだ。冬のコートとか大きいものは洋服カバーを買ってきて、押入れを改造したらしいクローゼットにかけた。それらの作業を二人で黙々とやった。  最後に床に掃除機をかけて、とりあえず部屋は綺麗になった。掃除機のコードを片付けながら、睦月はなんとなく聞く。 「友宏って光司といつ会ったの」 「一昨年の十一月。仕事で一緒の現場になって」 「舞台?」 「いや、事務所持ちの深夜特番……、あー……、いいや、こっち」  友宏は妙な顔をした後、テレビの部屋に移動した。睦月はついていく。  友宏はテレビの下の棚を漁って、録画ものらしいディスクを引っ張り出した。マジックでなにか殴り書きしてある。英語だ。 「12/23 Kiss Friends 10……?」  睦月が読み上げる間に友宏はそれをプレイヤーに入れた。 「ほんとはこれ女の子のアイドルとかがやる深夜番組なんだけどさ。年末特番でなんでか俺と光司に来て、それで初めて会った」  深夜ものにありがちな通信販売のCMを何個か飛ばした後、安そうなBGMが鳴って、画面に光司が映し出された。 『え? 初めて初めて。会ったことないもん。十七歳? 若すぎて超ドキドキする』  速風光司。モデル。二十一歳。三ヶ国語を操る帰国子女。  画面のテロップに合わせて光司がいつもの顔で笑う。     
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