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『あ、でもおれね、めっちゃ自信あるよ。もうおれ超キスうまいから』  睦月と出会う前の光司がそこにいた。光司は綺麗な顔で人懐こく笑い、SEが鳴って画面が代わる。  狭間友宏、俳優。十七歳。現役高校生。 『いやほんと緊張しますよ。聞いた時すごい驚きましたもん』  いまより少し幼い顔をした友宏は、無邪気に笑っていた。 「これの顔合わせが初めてで、まあ、そのあとは流れで察して欲しいっていうか……」  プレイヤーのリモコンをその辺に放って、友宏はやけくそみたいにソファに腰を落とした。落ちていたクッションを無造作に拾って抱える。睦月も黙って隣に座った。  一時間の深夜番組だった。キスフレテンカウント年末一時間スペシャル。ルール・一日相手とデートして十回キスをしましょう! 相手の意外な一面がわかるかも……!  ルールのテロップが大写しになった後ろでは、前回までの記録なのか、かわいい女の子たちがほっぺにキスしたりおでこにキスしたり、微笑ましかった。だが、 「男二人とか完全に事故じゃん……」 「俺も思った。でも社長やれっていうから」  テレビの中ではどこかの事務所で友宏と光司が顔を合わせて挨拶をしていた。光司は完全にいつも通りで、友宏だけが緊張している。     
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