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 二人は冬の街に繰り出して、本当に「デート」した。電車で移動する。真冬の動物園をうろつく。うろうろしながら話す。『なんて呼べばいい? 友宏? トモ?』『なんでもいいっす』『じゃ、トモ。あのねぇ、デスとかマスとかつけなくていいよ。おれ敬語? とかわかんないし』『こっちはなんて呼んだらいい?』『光司でいいよ。さんとかくんとかいらない』  光司が寒いとぐずって友宏と手を繋いだ。動物園でウサギに餌をやって二人で笑った。ライオンの餌やりで二人してビビる。近くのカフェで冬限定メニューを頼む。見ているうちに動物園まわりの観光紹介と抱き合わせなのだと気付いた。本当になんでこの番組を男二人でやっているのか謎だが、ワイプで抜かれた司会のアイドルたちはキャーキャー言っているので、きっと女の子向けなのだろう。  画面の中で二人は本当にキスをした。だいたい光司が友宏のおでこや頬に無邪気に唇を押し付けて、友宏はその度真面目に照れた。光司に気負ったところは全然なくて、そういえば海外育ちだったな、となんとなく思う。光司は人との距離が近かった。睦月と会った日もすぐ隣に座ってにこにこしていた。その近さが全然嫌じゃなかった。  カフェに座る光司は絵になった。まだ話し方に幼さと堅さが残る友宏は、たぶん視聴者には可愛らしく見えたのだろう。二人とも背が高くて顔が良いので見栄えが良い。光司は喋り始めるとバカ丸出しだったが、友宏の返事がクソ真面目なのでそれはそれで面白かった。年下の生真面目なしっかり者と、それに甘える年上の美人。     
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