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 光司がどんどんキスするので、画面端のキスのカウントダウンは順調に減った。頬、額、こめかみ、手の甲。ライオンに無事餌を与えたお祝いに額へキス。カフェで飲み物を持って来た友宏のこめかみにありがとうのキス。光司が友宏に唇を寄せる度、目に見えない色気がぶわっと画面に広がるようだった。事故にしかならないと思ったが、女顔の美人にキスされまくる少年というのは存外絵になった。キスされるたび友宏が少し緊張して、それでも徐々に笑みを崩して光司に懐いていくのが可愛らしかった。相手が女の人だったら生々しすぎたと思う。光司はときどきぞっとするほど色っぽい。 『ねー、トモはしてくれないのー?』  画面の中で光司が意地悪く笑う。あからさまに真っ赤になった十七歳の友宏は画面越しにもわかるくらいに緊張して、意を決して光司の頬に顔を寄せた。背の高い光司は笑いながら少し膝を曲げた。洋画とかでよく見る、ちいさい子供が親にキスするみたいな映像だった。画面端のカウントダウンは4まで減った。  隣の十九歳の友宏は、クッションを抱えて真面目な顔をしていた。過去の自分が光司のおもちゃのようになっていることに、なんの感慨もないようだった。睦月に見られていることすら意識にないかもしれない。  眺めている間に画面は夜になり、カウントダウンは1まで減った。夜の観覧車で光司が友宏を抱き寄せてつむじに唇を押し付けて、ワイプの女の子の悲鳴とともにカウントは0になった。冬季限定ナイトイルミネーションプラン、『キスフレみたよ!』で五〇〇円引き。  観覧車を降りた二人にカメラが寄る。  Q・キスフレ体験どうでしたか?  光司がテロップの横で笑う。 『おれもうめっちゃトモのこと大好き。いやこんなに好きになるなんて思わなかったんだけど、すげーかわいくない? かわいいよね?』 『いや、そんな言われても』     
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