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 光司は友宏を大事に愛して、友宏だってきっと光司を死ぬほど愛して、そんな関係が突然失われて、平気でいられるはずなんてないのだ。  遺品は片付けた。ずっと洗面台にあった歯ブラシも、洗顔料も捨てた。玄関に置き去りにされていた靴も、傘も、もうクローゼットの中だ。  速風光司は、もういない。 ※  光司は身勝手な男だった。事務所で偶然出会い、下宿か寮を探している、という友宏を自宅に連れ込んで、空いてる部屋を使えばいいと言って笑った。 「部屋多すぎるしちょっと困ってたんだ。父さんの持ち家だから家賃とかいらないし」  十一月の末。確か、キスフレの撮影から二週間も経っていなかったはずだ。光司は唖然としている友宏を家に押し込んで、ここはトイレここが風呂、キッチンここで隣が飯食うとこで部屋と部屋と、壁とったら大きすぎてどうしようってなってる部屋と、こっちベッドルーム。と、どんどん説明した。家の広さよりなにより、友宏は見たことのない大きさの巨大なベッドに驚いた。 「ベッドでか」 「狭いベッドとか絶対やだ。お前一緒に寝るだろ?」 「は?」 「え? 寝ないの」  光司はもう友宏が一緒に住むなんて当然、という顔をして首を傾げる。 「じゃあ、セックスはしない?」 「は? なに」     
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