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 光司の体は美しかった。陶器みたいに真っ白な肌に柔らかく骨の形が浮いて、あばらの形が鳥かごのように見える。華奢で薄い体をしているのに痩せぎすという印象はなくて、無駄なものを一切排除して美しいところだけを残したようだ。関節や皮膚が薄いところはほんのり赤く色づいて、色白な分、血色が滲むところが生々しく見えた。 「俺は、光司きれいだと思うけど」 「本当? 嬉しい」  何も考えないで言った言葉に、光司は嘘みたいに幼い顔で嬉しそうに笑った。笑ったり話したりするときに少し首を傾げる癖があるのをこの時知った。顔の周りで揺れるあかるい髪がくしゃくしゃで柔らかそうで、触ってもいいかな、と思うと、光司がこっちの手を掴んで頬に当てた。 「トモ、いろんなとこ触って。キスもして。いっぱいえっちなことしよ」  本当に嬉しそうに、幸せそうに言われて、熱い頬に当てた手をちょっと動かしてみた。指先に触れる髪はふわふわで、親指と人差し指で耳を少し撫でてみる。光司の耳は小さくて薄い。耳が小さい人間は話をなんにも聞かないんだ、と、昔祖母が言っていた。確かに、光司はこっちの話をまるで聞かない。 「こっちの手もして」  ベッドに投げ出していた手を掴まれて、耳のあたりに置かれる。同じように耳やうなじをくすぐると、光司はくすくす笑った。犬か猫を撫でているみたいだ。 「口あけて」     
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