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相沢良太とは高校三年間とも同じクラスだ。それなのにまともに話したことはない。
そう言えばたったの一度だけ言葉を交わしたことがあった。何に引っ掛けたのかわからないが相沢の左肘に擦り傷ができて、少し血が滲んでいた。こんなの痛くも痒くもない、って相沢は別に気にすることもなかったのだろうが、血でシャツが汚れることを異常なまでに気になった私はとりあえず相沢の意向など聞かずに絆創膏を貼ってあげた。いや、意向を聞かずにというのは、相沢と会話したら手が震えて絆創膏がまともに貼れないのではないか、というそれだけの理由だ。
突然貼られた絆創膏と私を交互に見た後「ありがとな。」と相沢は呟いた。
「か、構わないよ。」
これが私にとっての精一杯かつ超ぎこちない返事である。
それと気になることと言えば、たまに相沢は私に何か言おうとしてやっぱり止める、的な行動をする。思わせ振りな態度にも感じるが、彼にしてみたら単に「絆創膏程度で馴れ馴れしくすんな、あっち行け」くらいにしか思ってないかもしれない。
ーー私の妄想の世界では断然前者だが、現実は私の視線をウザがる後者だろう。ただ妄想世界では後者でもツンデレ相沢が成立するが。
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