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いずれにしても相沢が好き。耳にかかるかな、くらいの髪でメガネを掛けて涼し気な顔立ちをして人気者である。至極当然ながら学年で相沢に惚れない女子は皆無と言っても過言じゃない。。
客観的なイメージだが運動は間違いなく得意だ。特にそう思わせてくれたのが冬に行われるマラソン大会で、二年連続彼は表彰台だった。それより――
『目立たない』という言葉に輪をかけると言っても過言でなかったのは私の存在感で、
――コンビニの出入り口の自動扉が開かないくらい存在感が薄い――
と揶揄されても仕方ないほどだ。友達はみんな「きさら」と呼びすて。嫌われてはいないと思う。一方クラスの男子は何の捻りもなく苗字で呼ぶが、なぜか必ず枕詞がつく。「おい、矢崎」って具合だ。ご多分に漏れず相沢もそう呼ぶのだろうが、いかんせん呼ばれた記憶がない。たまの行動からこんな私がいることは認識しているのだろうが、結局は大して気にするまでもなく学校生活を過ごしているのだろう。正直そう思うと歯痒くて仕方ない。
が、それにも増して募る想いを伝える勇気の1ミリの欠片も無いことに一人嘆くしかなかった。
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