空から折りたたみ傘

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五時間目の授業が終わると一斉に下校だと言い渡された。今日は校舎の耐震工事だかなんかで工事車両が運動場へも入ってくるらしく、クラブ活動も休みとなった。 ――工事?  思わず図書館でのビーチサンダルの失敗を重ねて口の中が苦くなった。 ところがこんな時に限って担任から週明けのプリント作りを手伝うように指名された。担任も早く残った仕事を終わらさなければならなかったようだし、何より断れない雰囲気があった。 「私は工事現場から逃げ帰るから。じゃ、また来週! 」 千夏は意気揚々と、麻耶は申し訳なさそうに帰っていった。今帰るなら雨降らないし良いよねぇ、なんてちょっとひねくれながら友達を見送った。 見送った先に相沢を見つけた。週末だからか、ロッカーの物でも何か持って帰ろうとでも思ってるんだろうか。 相沢の横顔、やっぱり素敵だなーー。 当然ながら3秒もたずに視線を逸らした。息を吸い込んでもう一度視線を上げてみた時には、すでにそこに相沢はいなかった。 「おいおい、頼むから気を散らさずに手を動かしてくれよ。時間は限られてるんだから。」 担任の言葉は社交辞令というよりは懇願に近かった。
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