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都内のある洋館で端正な顔立ちをした長髪の女子高校生、氷上 睦美が歩き回っている。
先ほど、この洋館で殺人事件があり、睦美は警察と一緒に調査しているのだ。
普通だったら、警察が調査を止めるのだろうが、睦美は世間に平成の明智小五郎と言わしめるほどの推理力を持った探偵で、警察からも一目おかれているのだ。
「氷上くん」
と、警視庁の捜査一課に勤務する警部の、金田一 小五郎が睦美に声をかけた。
「なんですか、金田一警部?」
「何かわかったかね? こっちは手がかりなしだ」
「犯行時の状況なら分かりました。あとは犯人なんですけど、証拠がまだ」
事件は書斎で執筆活動をしていた推理小説家の稲垣 健介がたまたま睦美が訪ねて来ている時に、なんらかの原因で机に頭をぶつけて他界するといったものだった。
現場の状況から、稲垣が転んだ拍子に頭をぶつけたことによるもので、警察は事故死と断定したが、睦美が殺人を疑ってよく調べてみたところ、遺体の右手に服の袖のボタンが発見され、事件性もあるとして調査を始めたのだ。
「もうわかったのかね? 犯人は息子の健太─けんた─なのか?」
「健太さんは健介さんとは犬猿の仲でしたけど、彼に健介さんを殺害するのは無理でしょうね。となると、健太さんの妹の恵子が考えられるけど……」
「恵子が犯人なのか?」
「しかし、健介さんが書斎に入ってから遺体として発見されるまで、恵子には私と一緒だったという鉄壁のアリバイがありますからね」
「じゃあ、やっぱり健太が犯人なんじゃないのか?」
「確かに健太さんにはアリバイもないし、チャンスはいくらでもあるんですけど、動機がね」
「恵子はトイレ以外、一回もリビングから出てないのか?」
「それは私が証明しますよ。それに、一階のリビングからトイレに行くふりをして二階の書斎へ行き、健介さんを殺害して戻ることは、五分では無理ですよ」
(ん? 待てよ)
「そういえば、書斎はリビングの上でしたよね?」
睦美は何かを思いついたのか、表に回り込んだ。
「やっぱり……」
書斎の窓から梯子がかけられていた。
睦美はリビングに移動した。
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