0人が本棚に入れています
本棚に追加
「……いんや、いつも雨の日はこんなんだから慣れてる」
「……あ、ああ、そう」
またもや、沈黙。フードかぶりは、じっと青年の方を見つめたまま。青年は、多少の思案の後に、来た道を戻ろうとする。
「おい!」と、またもや呼び止められた。
「……、あの……だから何か用……?」
「お前の持ってるそれ」
「へ?これ?」
「それ、最近出たやつ……だよな?」
青年は、持っている缶をまじまじとみつめる。これって、最近出たばっかなのか。知らなかったな。
缶の味だけ自分が知っているいつもの味のようだった。
「……、ああ?あ、そうなんだ。あんまり、飲み物については疎くて」
「うまいのか?それ」
「まずくはないね」
「……そうかよ」
と、フードかぶりは、自動販売機の前へと歩む。なんとなく、興味を覚えたので、フードかぶりが買うところを見てしまう。
雨が少し強くなったようだ。青年の傘を打つ音が強くなる。しかし、フードかぶりは濡れていようが、気にしてはいなさそうだ。青年と同じように、財布から硬貨を取り出し購入する。
青年は、ああ、財布はちゃんともっているんだなと、妙な安心感を覚えた。だからと言って金品をせびられる危険性が減ったわけでもないのだが。
最初のコメントを投稿しよう!