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ガコンと、お目当ての品物は落ち、拾い上げる。 先ほどの青年が飲んでいた物と同じ。よほどのどが渇いていたのか、一気にごくごくと飲む。その間にも、雨露は、フードかぶりの全身を濡らし、雫が落ちる。
「これ、うめぇな。ひさかたぶりに『外』にでられたな……」
だからといって、傘もささずに外に飛び出るのはどうかと思う。よほど、うれしかったのかと青年が頭の中でつぶやく。
「ああ、おいしいよ、それ。おすすめだ。じゃあ、僕はこれで」
と足早立ち去ろうとする。青年は何か、タオルでも持ってこようかとでもかすかに思ったが、危うさは晴れておらず、一刻も早く立ち去ろうという考えで打ち消した。
「……」
「な、何さ?」
「なあ、今ヒマ?」
「……いや、えーと」
「何、ビビってんだよ?一言、二言話をした仲じゃねぇか」
「……」
「あ、あれか。別にそんなビビんなくても、俺は幽霊でもねーし。あんたから、脅して物を取るつもりもねぇよ」
「いや、そんなつもりは……」
フードかぶりに図星をつかれる青年。ここで、断ってもよかったのだが、なんとなしに引きずられる。
「……まあ、明日は特に用事もないし、別に……」
「なら、いいじゃねぇか。立ち話ぐらい聞いてけよ」
「あ……ああ」
青年は缶コーヒーを一気に飲み干し、ごみ箱に捨てる。そして、フードかぶりに歩み寄り、傘を差しだし、半分ほどのスペースを開ける。これから、長い時間を共に過ごすかのように。
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