本編

5/13
前へ
/13ページ
次へ
「別にいいって」 「……」  青年は、フードかぶりを傘の中に入れるようにする。 「……、いやな。ただの与太話なんだけど。鬼って知ってるか?」 「鬼……って、あの鬼?角が生えてて、虎のパンツはいてて、鉄の棍棒もってるあの?」 「いや、何で知ってんだよ。お前!いや、まあ、あってんだがな」 「え?有名じゃん?僕の小さい時なんか、普通に絵本に出てきたんだけど」 「お前、それどこの話だよ……鬼のこと知ってる奴、誰一人いないはずなんだけど」 「……?ああ、……そういうことか。こっちだと、そうなんだ」 「……?」  フードかぶりは、いぶかしげにのぞき込む。チラッと肌が見える。なんとなしに青年は、きれいな肌だなと思えた。 「あ、いや、気にしないで、続けて」 「なんで、お前が知ってんのか、よくわっかんねぇけど、昔々さ、鬼の一族ってのがここら辺に住んでたんだ。本当に昔」 「へえ……」  オカルトだとか、そういう興味あるならよくある話だと感じる。そういう場合、どこか人里離れた田舎だとか、山奥でよく言われているような、お話。 「その一族ってさ、住んでた村人たちと仲良くしててさ、なんつーか、そのぉ……」 「慕われてた……?」    
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加