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「別にいいって」
「……」
青年は、フードかぶりを傘の中に入れるようにする。
「……、いやな。ただの与太話なんだけど。鬼って知ってるか?」
「鬼……って、あの鬼?角が生えてて、虎のパンツはいてて、鉄の棍棒もってるあの?」
「いや、何で知ってんだよ。お前!いや、まあ、あってんだがな」
「え?有名じゃん?僕の小さい時なんか、普通に絵本に出てきたんだけど」
「お前、それどこの話だよ……鬼のこと知ってる奴、誰一人いないはずなんだけど」
「……?ああ、……そういうことか。こっちだと、そうなんだ」
「……?」
フードかぶりは、いぶかしげにのぞき込む。チラッと肌が見える。なんとなしに青年は、きれいな肌だなと思えた。
「あ、いや、気にしないで、続けて」
「なんで、お前が知ってんのか、よくわっかんねぇけど、昔々さ、鬼の一族ってのがここら辺に住んでたんだ。本当に昔」
「へえ……」
オカルトだとか、そういう興味あるならよくある話だと感じる。そういう場合、どこか人里離れた田舎だとか、山奥でよく言われているような、お話。
「その一族ってさ、住んでた村人たちと仲良くしててさ、なんつーか、そのぉ……」
「慕われてた……?」
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