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「そうそう、慕われてたってやつ」突っかかったものが取れたかのように声音も朗らかになる。
「お互いに助け合ったり、頼ったり頼られたり、仲良くやってたみてぇだな」
青年も昔、興味はあったもののそういうものは、話半分で聞いていたことが多かった。もしそうだったら、ロマンがあると。だが、今は違っていた。
フードかぶりは、足元にある、小石を蹴る。その小石はころころと転がり、水たまりを中へと進んでいった。
「で、ある日な、その鬼の一族に事件が起こったんだ。一族がいなくなるきっかけ。そん時もこういうような、雨の日だったらしいぜ」
「雨ね……」
「そう、雨」と、どこか、遠くを見ているようだった。
「まあ、村人のだれかが、外からよからぬものを呼び込んだんだと。見た目は、人間や、鬼よか、でかいらしいぜ。今となっては、間違いで呼び込んだんだか、呼んだ奴が鬼を憎くてなのか、わかんねぇ。で、気づいた時には、そのよからぬものは鬼をも凌ぐ力を持っていた」
「でも、僕のイメージだと、鬼って強そうだけど。凌ぐったって、一族だろ?複数で抵抗はしなかったの?」
「一族で、抵抗はしたっつの。けれども、すでに手遅れ。最後は、ただ一人残った鬼で『よからぬもの』に何とか傷をつけたが、惨敗。その後、その鬼がどうなったか知らねぇ」
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