本編

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「ふーん……」 「で、そのよからぬものは、村人に溶け込んだみたいでさ。だれが、そいつかわからなくなったらしい。で、その『よからぬもの』は夜な夜な人を喰ってるだとか、どうとかって話らしいぜ」 「へえ」 「そう、で、鬼から与えられた傷は、今でも残っていて、雨の日に傷がうずく奴がいれば、そいつが『よからぬもの』なんだと」 フードかぶりは、手をポケットに突っこんだまま下を向く。 「『よからぬもの』ね……」青年は、つぶやく。何か、思うことがあるのだろうか、けれども何も続けなかった。 「まあ、ただの与太話だな」 「ああ、そう……。それ、お前じゃないよな」 「ちげぇよ。一緒にすんな!もしそうだったら、もう、てめぇを襲って喰ってるはず」 「そっか、こんな悠長に話なんかしていないかもね……」  沈黙。雨足は、強くなるばかり。しかし二人とも、動くことはしなかった。 青年は、ふと、この話をしてみたくなった。自分自身の話を。 「僕も、話していいかい?」 「ん?なんだ?」 「実はさ、僕、ホントは別の世界から来た人間なんだ」 「は?何言ってんだよ……。意味わかんね。まあ、別に聞いてやらんこともないけど」 「ははっ、ありがと」     
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