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「自由だと?」
「ああ、そうだ。自由だよ、自由。こぉんなクソッタレな仕事は早々に辞めて、自由の身になりたくてなあ……!」
「汝のような危ない者を自由にできるか!」
るにせは吠える。危険思想の塊のような人物であることはこの数分でわかったらしい。
だが、『吸血機殺し』は笑う。
るにせを小ばかにするように。
「カカカ、お前の目的次第だな。吸血機の殲滅が目指すところならば、おのずとそうなる。華原 都との契約によって! 俺は自由を手に入れるわけだ」
「吸血機の殲滅は、確かに吾がやるべきことだ……吸血機の発明者の孫として、やらねばならぬ……」
それは、華原るにせという少女の使命。今もどこかで人を喰らい続ける吸血機たちを破壊しなくてはならない。
少なくとも、るにせはそう考えている。
「俺は俺以外の吸血機を鏖殺したその時、再び自由を得ることが出来る……そういう契約だ」
『契約』。
その、兵器らしからぬ単語。
いくつかの意味深な発言。
るにせは、目の前にいる男が本当に兵器なのかすら分からなくなっていた。
元より、吸血機とは人型であり、独立したAIを持つ兵器だ。
人との違いすら曖昧なのである。
ともかくと、るにせは思考を切り変える。
「ぬぬぬ……とりあえず、裏切ったりはせんのだな」
「裏切るやつは裏切るって言わねえよ」
「む、それもそうだ」
「仕事はこなす。それが俺のポリシーだ」
(信じるか……信じざるべきか……)
るにせは考える。
危害を加える意思はないだろう。『吸血機殺し』とだけあって、目の前の男は吸血機を一蹴出来るだけの力を持っている。
その気になれば、るにせを手にかけることも出来る。そんなことをせずとも、たったと離れることも出来るのだ。
「ぬう……」
「お嬢様、お顔が赤く……」
「心配するでない、知恵熱だ!」
知恵熱はそういう意味ではない。
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