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「30」
「なに?」
ぼそりと『吸血機殺し』は数字を言った。
「あの吸血機、撤退の前に呼んでいたみてえだなあ」
「……もしや」
「ああ、そうだ。このスクラップ場に──」
「スクラップ場ではないぞ!」
「失敬。このゴミ置き場に──」
「ゴミ置き場でもないわ! 喧嘩を売っているのか汝は!」
「なんて遊んでる間にご到着のようだぞ、嬢ちゃん」
天井のあった大穴から覗く、機械群たちがそこにはあった。
どれもこれも、無表情だ。
不気味。その一言で片が付く。
「──ッ、吸血機……!」
「そうだ。お前が挑むべきものだ。俺が打ち倒すべきものだ。さて、どうするよ」
ゆっくりと、『吸血機殺し』は立ち上がる。
ぎらつく瞳は殺意に彩られていた。
「吸血機は……吾が戦うべき相手だ。汝は、吾の味方なのだろうな」
「味方じゃあねえ。俺は兵器だ。引き金を引くかどうかは、お前が決めろ」
「ぐ……」
「俺をどう使うかはお前次第だ。さて、どうする?」
にいっ、と『吸血機殺し』は笑う。
これは、選択の時である。
『吸血機殺し』と華原るにせの関係性を決定付ける時なのだ。
葛藤の中にいる、るにせを『吸血機殺し』は品定めする。
べろり、と舌が口の周りを舐めとる。
「……元より……元より! 吾は吸血機と敵対する身だ! これ以上人間を喰われてたまるか! 人類を喪ってたまるか! 誰一人として死なせはせぬ! 汝が吾の武器というならば! あの吸血機たちを討て!」
「そいつぁ命令か?」
「そうだ!」
「そうかい。ゆるりと待ってな、嬢ちゃん」」
『吸血機殺し』は跳躍する。ぽっかりと開いた穴を越え、眼下に収めるは吸血機の群れ。
拘束衣を纏っているとは思えない軽やかな動き。着地した『吸血機殺し』はゴキリと首を鳴らした。
「敵対勢力発見」
「敵対勢力確認」
「敵対勢力を沈黙させます」
「三下が……」
武器を構える吸血機たちを、『吸血機殺し』は嘲笑う。
「闘争の中で生まれた俺たちは闘争の中で生き、闘争の中で死ぬ。闘争の渦へようこそ、小童ども」
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