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『吸血機殺し』は両指から血液を垂らす。
変化は一瞬であった。十筋の血液が鋭い槍となり、その矛先を吸血機たちに向ける。
「では死ね」
十の紅槍が放たれ、吸血機を貫く。
「では散れ」
拳で頭を砕き、脚で心臓を打ち。
「では去ね」
子供がおもちゃを壊すかのように容易く吸血機を屠る。
その光景はおぞましいものであった。
ワンサイドにしてジェノサイド。
ものの数分足らずで、吸血機たちは残骸と成り果てた。
現行最強。そのはずだった。
「てめえら程度じゃあ、肩慣らしにもならねえよ」
吸血機の残骸に座った『吸血機殺し』の周りに大量の血が集まってゆく。
吸血機たちから流れ出る血液は全て飲み干された。真の残骸となった吸血機たちに、『吸血機殺し』は何の感慨もわかない。
吸血機を殺める。それはただのルーチンワークでしかない。
「やはり不味い……ちったあ食い甲斐のあるやつはいねえのか」
ただ量が多いだけだと、不満げに『吸血機殺し』はつぶやく。
「三〇の吸血機を瞬殺するなんて……お嬢様、あの男は紛れもないジョーカーです」
「吾はとんでもないものを呼び起こしてしまったのだな……」
三〇もの吸血機がいれば、小国程度なら落とせるだろう。それだけの強さがある。
それを、ものの数秒で『吸血機殺し』は沈黙させた。
己は兵器であると、『吸血機殺し』は言った。それは、るにせの采配次第でいかようにも出来るということだ。
るにせは冷や汗が伝うのを感じた。
「嬢ちゃんたち」
「む、なんだ」
「物陰に隠れてろ」
「なぜだ? 吸血機は全滅したのだろう?」
「全滅させたなんて言ってねえよ」
「たしかに……! では、いるというのか? 他にも吸血機が」
「ああ、そうだ。こいつらみたいなのとはちょいと勝手が違うぞ」
「そいつも倒せるのであろうな」
「当然」
るにせとセツナが瓦礫の山に身を隠すと同時。
紅き光線が走った。
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