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「な、なんだ!」
「これは……」
人間ほどの直径を持つ紅線を、『吸血機殺し』は掌底で真っ向から受け止める。
『吸血機殺し』の腕がビリビリと震えた。
一撃必殺の技は地面を蒸発させ、アイスを救ったようにえぐる。
吸血機たちの残骸が紅線によって溶け、熱量のすさまじさを伝える。
「ふん……」
「……吸血機は人の血を喰らえば喰らうほどその力を増す……! 成長した吸血機──遠隔射撃ということは、甲型か! 狙撃のエキスパートだぞ!」
「んなこたぁ知ってらあな。こちとら吸血機のエキスパートだ」
吸血機の残骸を一瞥し、『吸血機殺し』は立つ。
「さて、食後の運動と洒落こむか」
返答はいくつもの紅線であった。
拡散するように撃たれた紅線の合間を縫うように『吸血機殺し』は避ける。
「九時の方向……!」
「いや、次は上だな」
拳を振り上げると同時、パァンと、紅い爆発が起きた。
それが紅線によるものであると、数瞬の後、るにせは理解する。
早いのだ。何もかも。元より武のセンスのないるにせは解析をすることだけで精一杯である。
「何体もいるというのですか!」
「いや、違う……『育った』甲型ならば、一機でも可能だ……!」
「ふん。何体でも来てもらったほうがありがてえんだがな」
「余裕こい取る場合かー! 甲型が相手ならば、安全圏というものは存在せんのだぞ! 汝も吾も危ないわ!」
「雑魚吸血機にピーヒャラと……認めたかねーが、俺は華原 都の最高傑作だ。婆さん好きなら婆さんの作品のことを信じたらどうだ?」
『吸血機殺し』は──撃ち抜かれた。
瞬間の出来事だった。ありとあらゆる角度から襲いかかってきた紅線が、『吸血機殺し』を蜂の巣にしたのだ。
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