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「吸血機サンよォ……吸血機の殺し方を知ってるか?」
おびただしい量の血液がぼたぼたと落ちる。
落ちて、血溜まりを生む。
そして、それこそが狙いであった。
『吸血機殺し』に再び殺到する紅線への打開策。
「てめえが相手してんのは人間じゃあねえんだよ」
それはこの世のモノとは思えない光景であった。
血で出来た巨大な結晶が、『吸血機殺し』を中心に現れたのだ。
血晶とも言うべきそれの頂上に、『吸血機殺し』は立つ。
「──兵器だ」
血晶に飛び込んだ紅線は複雑に反射する。
そして、放たれた位置に向かって収束するという結末を迎えた。
人間離れした業。元より。彼は人間ではない身。
「……ッ!」
「おおっと? 物陰から転がり出る吸血機さんが一匹か」
ひし形の六枚羽根、身の丈以上のアンチ マテリアル ライフル。そして、睨みつける意思。
遠距離戦特化型吸血機──甲型。
思ったよりも近くにポジショニングしていたのは、慢心ゆえか。
「どうだ、引きずり出された狩人さんよ」
「……『吸血機殺し』。なぜ、人の味方をする? 人間とは我々の食糧以上の存在ではないはず。なぜ、同胞を殺す?」
「契約だからだ。誰が積極的に人助けなんざするか。俺はさっさとお前らを潰して、戦場に帰るんだよ」
「『吸血機殺し』。貴方は何者だ」
「んなもんどうでもいい」
アンチ マテリアル ライフルが向けられる。銃口以上の太さの紅線が発射された。
『吸血機殺し』の血晶がその熱量で溶かされる。下から上へとじわじわと迫る紅線を冷たく『吸血機殺し』は見た。
「俺が何者なのかも、お前が何者なのかも、くだらねえ。生きるか死ぬか。それだけだ」
ずるりと『吸血機殺し』は動き、紅線を造作もなく避ける。
着地と同時に瓦礫の山を踏み、音を立てた『吸血機殺し』。
そのどす黒い瞳は甲型を射抜く。
機械にはないはずのもの、恐怖を与える視線。
「──『吸血機殺し』はここで始末する。貴方は危険すぎる。これは、吸血機の総意。我が最高の一撃で沈め」
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