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紅線が上空に向かって放たれる。
その先にあったのは、菱形の鏡であった。
装甲に触れた紅線はその軌道を変える。
単なる反射ではない、反射する度に、より高密度に高威力に高速になるというギミック。
いくつも配置される反射装甲により、紅線はその殺意を爆発的に膨らませていた。
「いかん! あれだけ威力を上げられては!」
るにせは焦り、『吸血機殺し』を見るが──
自然体だった。
「なにをぼさっとしとるかあ!」
「俺はやる気に満ちてるぜ。ホントホント」
「それはやる気のない人間の言うことだ!」
「オイオイ、俺は吸血機だぜ?」
「たわけー!」
『吸血機殺し』を中心に紅く輝くは六芒星。
「其は死の籠目紋。無に帰れ。『吸血機殺し』」
トリガーが引かれた。
紅線が上空より迫る。それは紅の奔流。
紅き爆発が、地を揺らす。
「無事か!」
「いけませんお嬢様!」
爆風が地下のるにせたちまで及び、飛来する粉塵がるにせの顔を叩く。
「次は、華原るにせ。我々吸血機の設計図を──」
甲型は勝利を確信した。
しかし、その確信は一瞬にも満たなかった。
紅の中から響く、チャリ、チャリ、という音。
「……ッ」
「この程度、死線にもならねえ」
影から脚が出る。腕が出る。顔が出る。
「あ、ありえない! 貴様が稼働していた十年前とは違う! 我々は進化した!」
「それがどうした。たかだか十年で俺を越えられるとか思い上がってるんじゃあねえ。レベルが違う!」
煙が晴れ、傷一つない拘束衣の『吸血機殺し』がそこにある。
「最高の一撃は無に帰ったぞ。さあ、どうする?」
「う、おあああああああ!」
返答は恐慌の乱射であった。
耳が痛くなるほどの銃声。
眩い紅い光の明滅。
「無駄だ」
傷も、なにもない。
『吸血機殺し』は無慈悲に甲型の首を掴んだ。
「お前はここで退場だ」
尖った八重歯を首筋に突き立てる。
吸うは吸血機の命。
ごくり、ごくりと喉が鳴る。
「うご……あ、ぐ……」
「見ろ、セツナ……あれが、吸血機というものだ……」
血を全て吸い切ったとき。そこにあるのはからっぽの残骸であった。
物言わぬそれを無造作に投げ捨て、『吸血機殺し』は傲岸な笑顔を浮かべ、るにせを見る。
「……汝は、何者だ?」
「吸血機だよ」
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