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「そういえば、汝の名を聞いていなかったな」
るにせとセツナは、地上で光を浴びていた。
研究所跡地から『吸血機殺し』に抱えられ、脱出したのはいいものの、人型の吸血機が転がっているその様は死屍累々。あまり心地のよいものではない。
「言っただろう? 対吸血機用決戦生体兵器六六六號。それが俺だ」
「む、型番を聞いたのではない! 個体名でもよい、汝だけの名はないのか?」
るにせはそう問うたが、『吸血機殺し』の返答は否、であった。
「そんなもんはねえな。名前に何の必要がある? 殺し殺されの中に、名が必要か? 兵器に型番以上のものを求めるか? あえていうなら『吸血機殺し』でも十分だろう。それが俺の名前だ」
「まったくわかっとらんな! 汝は兵器であるが、意思がある! ならば名を持つがよい! なんなら、吾がつけても構わんぞ」
ふふん、と腰に手をあてる、るにせを心底どうでもよいという目で『吸血機殺し』は見る
「ほう、どんな名だ」
「ふふふ、聞いて驚くがよい! 汝の名は──」
「どぅるるるるる」
「なにやってんだ、メイド」
口ドラムである。
「じゃ~~~~~~ん」
「なにやってんだ、メイド」
口シンバルである。
「クロだ!」
「クロ」
「うむ!」
自身満々で、るにせは身体を反らせた。
「俺は犬っころかぁ?」
「む、不満か? よろしい。それは自我のある証拠だ」
「いや、別にいいがよ」
「よいのか!? くっ、不満を持たないとは……さては貴様、冷血だな!」
「俺の血液は常に適温だ」
「そうではないわーっ!」
「暇なヤツだな、お嬢ちゃん。俺はさっさと吸血機を狩りに行きてえんだがな」
「吾も出来るなら行きたいわ! ええい、ゆくぞクロ! などと締まらんではないか!」
「何を俺に求めてんだかなあ」
「よし、ではシュヴァルツとしよう! かっこいいぞ!」
「クロじゃねえか」
「お嬢さまが満足してらっしゃるので、それでよいのではないのですか? シュヴァルツ」
「そぉかいイエスマン」
耳をほじりながら、『吸血機殺し』改め、シュヴァルツはそう答えた。
「よーし、今から汝はシュヴァルツだ……って、もう少し真面目にならんか!」
「あー、お嬢ちゃんら」
「? なんだ? シュヴァルツ」
「来るぞ」
瞬間、シュヴァルツは爆ぜた。
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