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吸血機の口から、血がたらりと一筋垂れる。
「その血は……」
「餌です」
一切の慈悲なく銃口が向けられた。
銃、というよりは、それはもはや大砲であった。その砲門でどれだけの破壊と殺戮を繰り返してきたのだろう。
「人間は我々の餌です。しかし、華原るにせ。あなたにはそれ以外の利用価値があります──『設計図』の在り処は?」
「し、知らぬ!」
「イエス。ノー。華原 都の孫娘である貴女が知らないはずはありません」
「……ッ!」
「迅速な回答をおすすめします」
「お嬢様には指一本触れさせません……!」
セツナが、るにせの前に立つ。
「邪魔です。あなたは不要の存在です。抹消します」
「ま、待て! セツナを撃てば、吾も死ぬぞ! 貧弱な身体なのでな!」
「御冗談を。人類とは違い、我々は正確に、微塵の狂いもなく不要物のみ処理できます」
「セツナ……どけ! どくのだ! 無駄死にをするな!」
「お嬢様は設計図をお持ちではありません……しかし、あちらはあると思っている……辿る未来は変わりません」
「問答は終わりでしょうか? では、不要物の処理から」
無機質に銃弾が放たれた。
迫る銃弾は大口径。
人間が当たればひとたまりもない。原型を留められるかすら不明だ。
どうすればいい。そう、るにせは思うが、どうしようもない。彼女の細い腕では、何も出来ない。
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