『吸血機殺し』

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「Danger……! Danger……! Danger……!」 「ハンッ。血狂いの機械め……嬢ちゃんが俺の新たな主人ってみたいだなあ。ええ、オイ」  ゴキゴキと首を鳴らしながら、男はるにせを見下ろす。 「な、汝は……?」 「『吸血機』だよ」  ニイッと笑う男。 「『吸血機』を殺すためにデザインされたな」  重量のある金属が擦れ合う音が響く。 「我々『吸血機』を狩るもの」 「ヤー」  チャリ…… 「世紀を越えた天才、華原 都の手が入った『吸血機』」 「ヤー」  チャリ。 「『吸血機殺し』……!」 「ヤー」  チャリ……! 「Ja! Ja! Ja! よおく知ってるじゃあねえか。ガラクタよお。なら、てめえの行き先くらい分かってんだろぉなあ!」  どこまでも傲岸に、男は笑う。  それへの返答は、砲弾であった。だが、男に動揺は微塵も存在しない。 「一度防がれたくらいじゃあ、理解出来ないか? ダアホが」 「損傷無し。異常。異常。異常」  軽く突き出した手が、砲弾を掴んでいる。音速など遥かに越えるにも関わらず、平然と男はやってのけていた。 「ちゃちい砲弾一発でこの俺をどうこう出来るなんざ考えるんじゃあねえぞ、三下」 「撤退を」  吸血機が大きく飛びずさる。 「吸血機が獲物ぉ逃がすと思うか?」  追撃に使うは吸血機が撃った弾丸。  それを、ただ男は投げる。  火薬もなにもなしの投擲。しかし、出せる速度は、吸血機のそれを大幅に上回る──! 「……ッ!」  吸血機の取れる手段は唯一。最も硬度の高い部分で受け止める。  すなわち、右腕。  だがそれでも勢いを殺せない。弾き飛ばされた吸血機は瓦礫の中に叩き込まれる形となる。 「お前の武器はこれにてお釈迦だ。さて、どうするよ、吸血機」 「撤退、撤退を……!」  瓦礫から這い出た吸血機は機械らしくもなく、うわ言のように撤退という言葉を繰り返す。  その前に立つ人影が一ツ。 「ガラクタくん、それではさようなら」 「嫌だ、嫌だ、死にたくない、誰か、助け……死にたく──」  男は、吸血機の頭部を踏み潰した。  機械が飛び散り、血液が広がる。
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