『吸血機殺し』

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──吸血機。第三次世界大戦を終わらせるために作られた人型兵器 ──その戦果は凄まじく、吸血機を投入した国に形勢は一気に傾いた ──しかし、予想外のことが起きる ──吸血機たちが人間に反旗を翻したのだ ──最強の兵器は、人間に牙を剥いた ──以来、人類と吸血機は闘争の渦の中にある 「ラボは壊滅……組織は全滅……どうすればいいのよいのだ……あああ……おばあ様よ、なぜ逝ってしまったのだぁぁああ」  るにせは頭を抱え、ゴロゴロと転がっていた。  白衣が瓦礫やホコリで汚れるも、お構いなしである。  見方によってはいもむしにも見える。 「なにやってんだ、あいつ」 「キャパシティを越えたお嬢様はたまにああなります」 「ふうん」  男、『吸血機殺し』は自分から話を振ったというのに、心底どうでもいいようだった。 「婆さんよりも古臭い口調だな」 「チャームポイントです」 「そうかい」  やはりどうでもいいように答えた『吸血機殺し』。  と、るにせがガバリと立ち上がった。 「ええい! いつまでも腐っている場合ではない!」 「お、復活した」 「汝は吾をしっかり守るのだろうな!」  るにせは『吸血機殺し』を指さす。 「守るぅ? 守る、なんざガラじゃねえ。俺は一つの兵器だ。兵器は破壊をもたらすものでしかない。華原 都め。こんなガキを守れと命令(プログラミング)しやがった。この俺が、子守りだと……? 冗談じゃねえ」  返答は吐き捨てるようなそれだった。 「冗談でないのはこちらのセリフだ! もう吾はぷんすかだぞ! ぷんすか!」  吸血機を殺すのに、吸血機を使っている。  それがどれだけの危険性を孕んでいるか。  るにせがバタバタと手足を動かしているのを見、『吸血機殺し』はバリバリと頭を掻く。 「たく、お前らと遊んでたら俺の望みはいつ叶うやら」 「望みだと?」 「望み……機械が持つのでしょうか?」 「吸血機は自我を持つ機械だ。ま、俺は特別性だからその辺り色々あるが。望みなんて大したもんじゃねえ。たった一ツ」  『吸血機殺し』は人差し指を立てる。 「『自由』」
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