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「巻き込んだら、僕みたいな人がまた出てくるよ」 「榛名くんみたいな人?」 「別の事件で危うく犯人になりかけた。俺が救わんかったら危なかったで」 赤崎先輩が関わっているのはリアルホラー本だけなのか。 リアルホラー本のように、恐怖な謎として広めたかったのなら明かせるが、美術室の件は望月先輩という特定の被害者がいる。 彼女の悲哀を、不必要に広めなくていい。犯人のくせに波多野くんもどうやら同じ心境らしい。 「言うとくけどそんなん不可抗力やで」 若干の早口で、口を挟ませない。 「思い付いたん実行したら、勝手に怖がったり野次馬なったり。俺のあずかり知らんもんや」 「その逃げはずるいよ。そりゃ気持ちの問題だから怖がる生徒もいたり怖がらない生徒もいたり、好奇心で動く生徒も動かない生徒もいたり。勝手だとは思うよ。でも怖がる生徒や野次馬になる方が絶対に多いし、それになにより、ここには探偵が大勢いるんでしょ。吟味して配慮して、誰も傷付かない想定だったら、実行したらいいんだよ」 「無理無理。波多野くん頭よくないから。これだ、ってなったら突き進むタイプ」 「ボロクソ言うなぁ。当たってるけど」 「そういう性格は否定しないけど、巻き込まれる人の身にもなって。特に白石先輩」 「ん?なんで白石?」 「僕が巻き込まれた事件も探偵役は白石先輩だったし、リアルホラー本を調査してたのも白石先輩でしょ」 司書教諭が、探偵だと認識してたのは白石先輩一人だけ。図書室を管理する教諭が、生徒の探偵的行動を認めるにはそれ相応の理由が必要。 リアルホラー本の調査なら、それに該当する。 「白石くんは真面目だからね。生真面目。質実剛健で几帳面。校則は厳守するし制服も着崩さない。だから乱す人や物事には意欲的に関わっちゃうのよねえ」 「なっ、なんやねん。俺のせいっちゅうんか。ガッチガチな性格のせいやろ」 「いや君のせいだろ」 「関わる関わらんは自由な意思が決めんねんから。乱すもん言うても本人が不要やと勝手に決めただけで、非日常な経験がええ息抜きやと思てる奴もいてんちゃう?」 「詭弁よ、それ」 「百歩譲ってそうやとしても、間違えてたら世話ないで」 なあ、と同意を求められても僕は頷けない。
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