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「そうとも限らない。あいつは馬鹿だから、一挙手一投足に注意して見てたら、次の行動が予想できる。以前から窓の前をウロウロしてたりしたのかもな」
「前から波多野くんを見てたとしたら。窓の鍵を開けるまで、ずっと撮ってた可能性もある?」
「むしろそれが正解だ。落書き当日に、別の謎のために食堂の窓の鍵を開ける姿を偶然撮れるはずがない。犯人は昼ご飯を食べ終え、女子更衣室に行って、カメラで食堂を撮るという行動を繰り返してた、暇人な奴さ」
「その行動を何日も繰り返したんなら、誰かに怪しまれない?」
「どうだろ。一人で黙々と、且つ早く食べて、人目を気にしながら更衣室向かえば、誰にも気付かれない。友人と昼食を取っていても、別の理由を建前に使えば、一人で行動はできる。更衣室は一時以降、五限目の体育の授業のために開けられるからな。けど女子はお喋りに夢中で昼休みが終わってようやく着替える。あの制度、無意味だから廃止すればいいのに」
雨宮先輩は体は女性。だから着替えは、女子更衣室だ。当然、女子更衣室の事情にも詳しくなる。
それを理解しているのに、男子生徒の制服姿での説明に、違和感を抱いてしまう。偏見の目で見たくないのに、無意識に見てしまう。
「カメラは?」
赤崎先輩が首を傾げた。
「カメラは毎日、持ち込んでいたの?」
「そうだろうけど、初めはそうじゃなかったはずだ」
「そうじゃない?」
「カメラは小型で、隠されていたんだよな」
僕はカメラそのものを目にしていない。けれどあの場には大勢の生徒、先生がいた。
誰かが嘘をつけば糾弾されるだろうし、誰かの嘘に全員が乗るほど結託していたとは思えない。
唐突な疑問だったけれど、僕は迷いなく頷いた。
「犯人が先生でも生徒でも、小型のカメラを使う必要性が特にない。手元に便利なカメラがあるのに」
「そうか、スマホ!」
雨宮先輩が取り出したスマートフォンに、赤崎先輩は指を突き付けた。生徒の保有率は、百パーセントではないだろうか。
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