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「ここの大人達は、厄介事を極力避けて過ごすことを第一にしているようだよ。だから女子更衣室からカメラが見つかっても、その映像が大矢が食堂の鍵を人目を忍んで開けてるだけの映像なら、大矢に話を聞いて終わりだろうな」
「いろんな事件に対して、『方針は相談している』って何度も聞きました」
食堂の絵画の落書き。荒らされた図書室。二度の小火騒ぎ。悪意ある人物が事件を引き起こしているのに、大人は動こうとしない。
体面だけ取り繕って、保身に走っている。
小火は、一歩間違えれば校舎に燃え移って、大惨事を引き起こしていたかもしれないのに。
一度目の小火騒ぎのあと、校舎裏への立ち入りを禁止する措置は取れたはずだ。
「教職に就いているのに生徒よりも自分の方が大事って、なんかガッカリ」
「それが教師だから。いや、五十嵐先生は例外かな」
五十嵐先生は女子更衣室内の捜索にも、映像の確認にも第一線に立ってくれた。他の先生は五十嵐先生の意見を強くする形で、自分の意見は主張してない。
岡田教頭が根負けしなければ、女子生徒は不安や恐怖を抱えたままだった。
「それに、警察の介入は十中八九なかったと思う」
「どうして?」
「小型のカメラはおおっぴろげに撮るのではなく隠れて撮る──盗撮向きのカメラだ。不特定の人物に大矢の姿を見せるのが目的だったとしても、盗撮向きのカメラで撮る理由はない。犯人がそれを使用した理由は、そこにあったからだ」
「あった?カメラが?なんのため──」
息を呑む瞬間が、はっきりと分かった。目が、これ以上ないほど見開かれているろ、
口を両手で押さえていなければ、悲鳴が上がっていただろう。
波多野先輩の食堂の窓の鍵を開ける姿を収めるための小型カメラではなく、女子更衣室内に元々置かれてあった小型カメラ。
なんのためになど決まっている。盗撮だ。女子生徒の着替えを盗撮するための、小型カメラ。
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