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「驚愕だろ。悲痛だろ。だから推理はしたくないんだ」 犯人が用意したカメラではなく、以前から女子更衣室に存在していたカメラ。いつから仕掛けられていたのか。 時期は分からなくても、女子生徒の着替えの姿が映像として収まっていた可能性は、限りなく高い。 自分の姿を撮影されていたかもしれない恐怖が、赤崎先輩から言葉を奪っている。 僕は男子だ。それでも着替えを盗撮されたかもしれない恐怖や悲しみは理解できる。 憤懣やる方ない。女子更衣室、ひいては学校に恐怖を抱いてしまっても、真っ当な反応とすら言える。 だけど赤崎先輩は違った。 推理をしたくない。そう告げた雨宮先輩の態度に、眼鏡をずらして目元を強く拭うと、毅然と言った。 「大丈夫。続けて」 気丈に振る舞っている。続きを知りたくない。けど雨宮先輩には推理を続けてほしい。そんな葛藤が透けて見えて、けれどそれを指摘できなくて。 恐怖よりも、友人が立ち直ることのか若干勝っている。赤崎先輩は、強い。 「分かった」 たったの一言、雨宮先輩はそう言った。本当に続けていいのか、続けるべきなのかの確認は一切取らず、気丈の赤崎先輩の意志を汲んで。 推理が、再び始まる。 「女子更衣室に仕掛けられていた、盗撮カメラ。仕掛けた奴は、女子更衣室前の窓ガラスが粉砕されて、焦っただろうな。侵入者の目的は自分と同じではないか、と。だから現場に足を運ばずにはいられない。そして、女子更衣室内の捜索を出来る限り阻止したいと考えている人物。もしカメラが発見されても、警察の介入を阻止できる発言力を持ってる人物」 昨日のあの場に、雨宮先輩の推理に当てはまる人は、一人しかいなかった。 「盗撮犯は、岡田教頭なんですね」 「今年度からの教頭で、ここのズボラな管理体制なら、万が一発見されても警察への通報は免れるとの考えも働いていたのかも」 「──あの、ハゲ!?」 赤崎先輩の口から飛び出た暴言に面食らう。拳が作られている。
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