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犯人が判明したきょうふよりも、怒りが勝るのか。今すぐ岡田教頭を殴りに行く勢いだ。
「赤崎。クソ男への怒りは一旦静めてくれ。今は大矢だろ」
「うっ、ぐうぅ……」
「後日、全女子を味方につけて殴りに行けばいい。退職に追いやれ。ネットに晒せ。生き地獄を味わわせるのは今日じゃない」
優しく赤崎の拳に触れて和らげてはいるが、言葉は穏やかじゃない。なのに、赤崎先輩は深く頷いた。
見なかったことに、聞かなかったことにしよう。
「波多野くんの姿を撮った人は」
と、すっかり明るい赤崎先輩。
「カメラを毎日持ち帰っていた?」
「そうだろ。女子更衣室に置いていたら、いつクソ男に回収されるか分かったものじゃない」
「回収しようと立ち寄って日にカメラが無かったら焦るだろうね。毎日ビクビクしながら過ごす羽目になっちゃう」
「いい気味だ」
二人同時に、嘲笑する笑みが浮かんだ。僕は今、二人に恐怖しか感じない。雨宮先輩が切り替えて推理を続けたのが、なんとか僕をこの場に留めさせた。
「小型のカメラの出所は判明した。次にカメラを発見させるために粉砕した窓ガラスだけど、これはなんのことはない。廊下側から音を立てないように割って、外に落ちた破片を廊下に散らせ、用具保管庫から梯子を引っ張り出して置けば、さも外から侵入したように見せかけれる。大矢のトリックと似たようなものだ」
「トリック?」
「瞬間移動の。知ってる?」
首を横に振った。波多野先輩に向かって瞬間移動と発せられた言葉を耳にした記憶はあるが、詳細は知らない。
「大矢の僕への謎だよ。ある生徒──僕がそうとしか聞いてないから──が大矢を追っかけて一階から三階に行ったけど、大矢は事前に準備し、窓に立てかけていた用具保管庫の梯子を使って校舎裏に。逃げる大矢を追ってある生徒も梯子を下っていったけど、校舎裏に届くと同時に三階の窓から大矢が見下ろしている。その後は窓の鍵を閉めて逃走さ」
ある生徒とは、波多野先輩に瞬間移動と投げつけた、茶髪の男子生徒のことだろう。
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