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「話を続けます。望月さんが描画を行うために使用したこちらのキャンバスは、Pサイズの8号。455×333──45、3cm×33、3cmということになります。Pサイズは風景型と呼ばれており、風景を描くのに適している、ということでよろしいでしょうか」
誰に問うでもない問いかけだったが、被害者の望月遊莉さん以外は、一様に浅く頷いた。
「ありがとうございます。望月遊莉さんがコンテストのために描画していたキャンバスはPサイズ。風景を主体にしていらっしゃったということがキャンバスから判明しました。しかし!」
語気を強めた。布に手をかけた。次の行動が予測できて、中には僅かに目を逸らす人もいた。
僕も、その一人だ。
視界の端で、案の定布が取られる。作品が露になる。
いや、それはやはり彼の言うように、作品と呼ぶにはあまりにもかけ離れている。
僕に絵画の良し悪しを見抜く審美眼は欠片もないが、それは、幼児が乱雑に塗りたくったと言われても納得してしまう見た目だ。
「望月遊莉さんの作品は、悪意ある人物の手によってこのように塗り替えられました。望月遊莉さんには大変申し訳ないのですが、77元の油彩画の原型を一切留めておりません」
赤、青、黄、緑、桃、白、黒。
目についた色をとりあえずキャンバスにぶち撒けた印象だ。色が合わさって別の色も生まれている。
合計何色なのか判断できない。何十色かもしれない。
あれだけの落書きが塗りつけられたのに、望月遊莉さんの作品だと断定できたのは、微かに残っている無事な箇所からか。
右上、中心部やや左上、中心部右寄り、右下、左下。
大きく残っているのはその五ヶ所で、点々としてなら幾つも確認はできる。
しかし元の絵は風景を主体としていると言っていたが、どんな風景を描いていたのか、キャンバスからは知り得ることができない。
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