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舗装された渡り廊下を抜け出し、上履きのまま、火災現場に近付く。
小さくも確かに、火の塊がそこにあった。六月下旬は梅雨の時期なのに、ここ数日は晴れ間が続いていて、地面はぬかんでない。空から弱める、消し去る雨も降ってこない。
火の勢いは弱まるどころか強まっているように見受けられる。
「小火!?危なく、ない」
肩で息をし、腰に手を当てた赤崎先輩の目が見開かれる。
「ああ。これは危ない。先生呼んで来てくれんか」
「私……走って……体力が」
「僕が行ってくる」
あからさまに疲労してる人に使いっ走りをさせるのは酷だ。自ら志願し、踵を返す。
しかし駆け出す前に、赤崎先輩の怪訝な疑問に引き寄せられた。
「ねぇ。あれ、なに?塊のような」
「細かくなんか舞ってるよな。なんやろ」
燃えていると曖昧に説明するより、なにかが燃えていると告げた方が緊急性が高まる。
火災の原因を確かめようと、舞って散っている、燃えている物体を凝視した。
直前までその話題で持ちきりだったからか、同時に、異口同音に発する。
「……本?」
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