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僕は、野球部員の数を把握していない。野次馬となっていた十数人で全員なのか、第一グラウンドに残ってる部員はいたのか。 そもそも、何故野球部員だけが野次馬となっていたのか。 「ねえ。なんで野球部員がいたの?」 「なんでおったか?確か、トイレに行ってた奴がおったらしくて、そいつが小火見つけおってグラウンド行って戻ってきよってん。はた迷惑なやっちゃ」 「君が言う?」 「なにがぁ?」 図書室の件も美術室の件も棚に上げてるどころか、迷惑行為の自覚が心底ないようだ。 「ちゅうかそいつ、A校舎のトイレ行ってたらしいで。すれ違わんかったん?」 「無我夢中で走ってたから」 職員室は、校門側からだと第二グラウンドが見渡せるが、火災現場からは奥側だ。校舎は長い。 一秒でも早く、と僕はそのことしか頭になかった。視界の狭さを指摘された恥ずかしさと、ふとした疑問から僕は話題を戻す。 「あのさ。小火って、二回目じゃん」 一回目は、六月十五日の金曜日。正確な時刻は知らないが、午後七時頃。時間帯こそ違うが、場所は同じA校舎裏。 「二回とも、野球部員の仕業なのかな」 一回目の小火が燃やしたのは雑草だ。現在は、所々に申し訳程度に生えているが、それは小火騒ぎ後に刈ったから。 小火以前に渡り廊下からなんの気なしに見ることが多々あり、見える範囲で、結構生えてるなという印象をずっと抱いていた。 雑草でも、草は草。一回目も発見が早かったためか校舎には燃え移らず大惨事にはならなかったと月曜日のHRで報告があった。 二回目は、荒らされた図書室から紛失した蔵書が燃やされた。紙の束だ。 草と紙。どちらも火の手は早く回る。故意に火を付けたのだとしたら悪質だ。
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