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二年B組、芳田楓先輩も、制作終了までパレットを洗わない美術部員だ。
望月先輩と同じ、主に油彩画の描画をしている。芳田先輩も、油彩画を対象としたコンテストに出品予定だった。
一心不乱に、独創的な色で、描画していた。
美術部の、油彩画部員に順位をつけるとするなら、松井くんの主観な、偏見が含まれた結果、一位が望月先輩で、二位が芳田先輩。
しかし別の部員は、一位が芳田先輩で、二位が望月先輩だと言う人もいる。
二人は甲乙つけがたく、だからこそ切磋琢磨して己を、そして美術部を磨きあげてきた。月並みだが、親友でライバルのような存在。
その芳田先輩がコンテストのために使用していた、独創的な色が残っているパレットが月曜日、盗まれていた。
盗難が発覚したのは六月二十二日、金曜日。
月曜日の放課後は、食堂の絵画と、望月先輩の制作中の油彩画に落書きがされた日だ。
同日、ほぼ同時刻の絵画への落書きへの落書きに、美術顧問は不審と、不信感を募らせ、その日の部活動は禁止となった。
部員が準備する前に告げられたせいか、月曜日に盗難に気付く部員はいなかった。
火曜日、水曜日、木曜日と、芳田先輩は高熱にうなされ、自宅で療養していた。三日間、部員は誰一人、盗難に気付かなかった。
美術準備室には美術道具が多く点在しているのと、松井くんの言葉だと芳田先輩は気難しい性格。
勝手にパレットに触れようものなら、雷が落ちたあとに小一時間の説教が待っている。だから多くの部員は、芳田先輩のパレットがあるのかないのか気にしなく、淡々と準備をしていた。
完治し、三日振りの制作に取りかかろうと美術室を訪れ、パレットが無くなっていることに本人が気付いた。
金曜日の放課後、僕は二年C組の教室にいたから聞こえなかったが、松井くんに言わせると、無いと判明したあとの芳田先輩は発狂寸前だったらしい。
絶望し硬直のあと、怒鳴り散らし、泣き喚く。
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