19/30
前へ
/155ページ
次へ
「友人の意見に……」 「俺は中立だ。なんなら多数決を取るか?C組の生徒は半数は残ってるし、廊下には他クラスの奴が野次馬になってる。奇数で、過半数だったらその意見が真実だ。どうする?」 立花先輩は初めから、波多野くんをパレットを盗んだ犯人として見ていなかった。機を窺っていて、波多野くん不可能説に傾けば、それを一気に押し込もうと画策していた。 探偵役が動揺してしまったら、探偵役の推理に信憑性がなくなる。 動揺するのを待って突いたのなら、ずる賢いとすら呼べる戦法だけど、友人を守るために動いていたのなら、責めれない。 僕も、桐山か森川がやってないと確信できる罪で糾弾されていたら、守るために思惟を巡らす。確実に状況をひっくり返せる瞬間を見逃さない。 片瀬先輩や芳田先輩は声を発さない。野次馬が顔を見合わせている。二人が群衆の様子を窺っているのか。 立花先輩の言葉を否定する人がいない現状が、多数決を取らなくても結果を教えている。 「中立な立花の提案を受け入れんでええんか?過半数が俺を犯人やと思てんのやったらしゃあない、俺はそれを認めるで」 「……」 「せんでええんやな。ほな、俺はもう行くわ。たぶん、待ってる奴がおると思うし」 パレット見つかってよかったなー、と嫌味とも取れる言い方を、僕は背中で聞いた。 あからさまに走って逃げるのは怪しい。早歩きで階段に向かうも、二年C組の教室から出てくる方が早かった。 「ハル!俺が遅いからわざわざ来てくれたんか?ええ奴や」 「……勘違いしないで。君が責められてる声が聞こえたから、情けない声でも上げるんじゃないかと期待してだから。君、Mだし」 「男からのはいらんっちゅうねん。それに俺が負けるか。やってもないことを認めるわけないやろ」 「……」 「なんやねん!その目は」 疑いの眼差しから逃れるように肩を組んでくる。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加