40人が本棚に入れています
本棚に追加
「友人の意見に……」
「俺は中立だ。なんなら多数決を取るか?C組の生徒は半数は残ってるし、廊下には他クラスの奴が野次馬になってる。奇数で、過半数だったらその意見が真実だ。どうする?」
立花先輩は初めから、波多野くんをパレットを盗んだ犯人として見ていなかった。機を窺っていて、波多野くん不可能説に傾けば、それを一気に押し込もうと画策していた。
探偵役が動揺してしまったら、探偵役の推理に信憑性がなくなる。
動揺するのを待って突いたのなら、ずる賢いとすら呼べる戦法だけど、友人を守るために動いていたのなら、責めれない。
僕も、桐山か森川がやってないと確信できる罪で糾弾されていたら、守るために思惟を巡らす。確実に状況をひっくり返せる瞬間を見逃さない。
片瀬先輩や芳田先輩は声を発さない。野次馬が顔を見合わせている。二人が群衆の様子を窺っているのか。
立花先輩の言葉を否定する人がいない現状が、多数決を取らなくても結果を教えている。
「中立な立花の提案を受け入れんでええんか?過半数が俺を犯人やと思てんのやったらしゃあない、俺はそれを認めるで」
「……」
「せんでええんやな。ほな、俺はもう行くわ。たぶん、待ってる奴がおると思うし」
パレット見つかってよかったなー、と嫌味とも取れる言い方を、僕は背中で聞いた。
あからさまに走って逃げるのは怪しい。早歩きで階段に向かうも、二年C組の教室から出てくる方が早かった。
「ハル!俺が遅いからわざわざ来てくれたんか?ええ奴や」
「……勘違いしないで。君が責められてる声が聞こえたから、情けない声でも上げるんじゃないかと期待してだから。君、Mだし」
「男からのはいらんっちゅうねん。それに俺が負けるか。やってもないことを認めるわけないやろ」
「……」
「なんやねん!その目は」
疑いの眼差しから逃れるように肩を組んでくる。
最初のコメントを投稿しよう!