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長年の疑問が格好の題材として担ぎ出され、草一つ生えぬ砂漠に不毛の議論が巻き起ころうとしている。
盛り上がる熱気に善悪さまざまな利権が便乗した。海外のブックメーカーもそうだ。
俺は降るほうに旅費を除いた全財産を賭けている。一つ向こうの砂丘ではライバル企業の社長が熱弁をふるっている。
我が社の予報機以外は全て偽物だ。
その根拠を会見場の記者から求められ、彼はここぞとばかりに証拠を提出した。
「皆さん、かの元祖予報機はフェイク商品であります。それが証拠にセンサーを湿らせる機構が予め備わっている!」
俎上に置かれた装置はケースが取り払われ、部品がむき出しになっている。そこには水を満々とたたえたタンクが付属していた。
会場がどよめくなか、社長は決定的証拠でダメ押しする。なんと小さなWi-Fiアンテナが内蔵されていたのだ。
「つまり、これはどういうことですか?」
「静粛に静粛に」
社長は怒号が飛び交う会場を必死になだめた。
彼の説明を要約すると、どうやら元祖予報機は複数の天気予報サイトを比較検討して降水確率を確定させたのちに、センサーを湿らせるという仕掛けらしい。
「100%近い確度まで解析ルーチンを磨き上げた技術は称賛に値するが、ウソはいかんのう」
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