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タンクはセンサーの表面とつながっているが、排水口も注入口もない。
「降るな。うむ」
発明家はうなづくと、小高い砂丘の頂を指した。
「黙って俺について来い」
そして、決戦の朝を迎えた。
強い日差しが照り付け、厳しい暑さが容赦なく体力を奪っていく。
俺たちは社長の忠告に従って標高の高い場所へ移動した。予報機のポリタンクは空っぽのままだ。
双眼鏡で見下ろすと例のライバル社長が未だにこちらをディスっている。「雨が降るはずはない」と。
世界の関心は競合製品よりも詐欺事件の展開に移っていて、捜査当局が逮捕状を請求したという速報も伝わってくる。
バラバラバラ、と乾いたローターが聞こえてきた。俺が双眼鏡を覗くとカーキ色したヘリコプターが旋回している。
「いよいよ逮捕か?!」
味方だと思っていたマスコミ連中が手の平を返した。彼らは腐ってもマスコミだ。特ダネになるものなら何でもいい。
インチキ社長拘束の瞬間をとらえようとレフ板やカメラが向く。
と、その時だ。
ごうっと地響きがしたと思いきや、あたり一面がとっぷりと暮れた。
そして、叩きつけるような雨が降ってきた。
「わああっ!」
予想外の荒天に記者たちはテントへ逃げかえった。それも突風で引っぺがされた。
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