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大小さまざまな物が飛び交うなか、俺は双眼鏡で谷間を覗いた。
海だ。
あるはずのない海が広がっていた。ライバル社長たちの影は跡形もない。
『荒天到達不能極に雨が降る』
後日、俺は金貨の風呂に肩まで浸かりながら、一面を眺めた。
解説記事がほほえましい。
物理に明るくないズブの素人が懸命に纏めたのであろう。
元祖予報機は正しかった。
それは未来から降ってくる雨を検出する装置だった。
雨露の検出というと、我々はセンサーが湿る様子をイメージしがちだ。
前日に検出機器が濡れるのだろう、と。
だが、それは完全な誤解だ。おそらく予言者が前もって警告する光景を連想するのだろう。
あるいは空っぽのコップが立ち直って、水を吸い込むシーンを思い浮かべるに違いない。
しかし、論理的に考えるならば、まず「湿ったセンサー」が先にあるべきだ。
難しい話ではない。時系列を単純にさかさまにすればいいだけだ。
「未来」から「今日」へ雨粒がやってくるということは、「今日の雨粒」が「未来へ帰っていく」ということなのだから。
だから、元祖予報機のポリタンクは満タンでなければならない。
その水位が少しでも減れば、近いうちに雨が降る。
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