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そこで七木田はふと妙なことを思った。
――じゃあ、なんでおれじゃダメだったんだろう。
少し前に知り合いになったこの男より、ずっと前からのつきあいなのに。ゲイにもモテモテだったはずなのに。これではまるで嫉妬しているみたいだ、と自覚して、さらに妙な気持ちになった。
――おれのセクシュアリティーは、いったいどうなってるんだ??
七木田が文字どおり三日三晩考えて出した結論は、以下の通りである。
なぜ自分ではダメだったのか。それは、友人の好みではないから。
自分のセクシュアリティーは、どこにあるのか。それは、妄想できるぐらいには嫌悪感はないが、行動に移すほどの秘めたる衝動もない。
と、なる。
「七木田」
外から帰ってきた七木田に気がついて、坂本が声をかけてきた。こちらに近づいてくる友人の表情を見ながら、こいつやりまくってるな、と彼は思った。
「何? 変な顔して。昨日はやってないから」
――嘘つけ。絶対やった。
「悪い、今夜は無理だから。おれ、工藤くんと飲みに行く」
end.
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