Chapter 1

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翌日の昼、外に出る前に、管理事務所に寄った。その後関係者から連絡があったか訊いてみたが、答えはゼロだった。 別に関係者が見つかったからといって、何がどうなるというわけでもないことは、承知の上だった。見つかれば、管理会社から病院へ連絡が行くだけだ。見つからなかったからといって、何かこちらが責任を負う立場でもない。 ただ… ただ、あのときイメージに浮かんだ胎児の行く末が気になって仕方がなかった。 きっと、半年前に生まれた姪の存在が、そうさせるのだ。 自分の妹が母になって赤ん坊を抱く姿は、ある意味衝撃的だった。 生んだとたん、妹は母の顔になっていた。その腕に抱かれた小さな姪は、安らかで幸福そのものだった。そんなふたりをそれまで見たこともない優しい表情で、義弟が見守っている。 でも、あの胎児には、それが無い。 最初から、無いのだ。
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