Chapter 1

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翌日の土曜も猛暑が続いた。 新生児の面会の時間に合わせて、病院の前で待ち合せをした。 私服の坂本は、スーツの時より若く見えた。 どうして、年齢さえさりげなく訊くことができないんだろう。そんな自分に、びっくりだ。 「工藤さん、私服だと大学生みたいですね」 頭を少しかしげながら、坂本が言った。 「そうですか?」 「同い年ぐらいかと思ってたけど、ひょっとしてすごく年下かな?」 「25です。坂本さんは?」 マジか、という表情をしたのをおれは見逃さなかった。 「おれ、30ですよ」 マジか、という表情をしたのを見られたかもしれない。 「ま、いっか、歳の話なんか」 坂本、もとい坂本さんはそう言って、歳の話題を終わらせた。
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