Chapter 1

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「山口沙織さんは、何でうちのビルにいたんでしょうね」 おれは坂本さんに話を振ってみた。 「そもそも、そこだよね」 坂本さんは赤ちゃんから、やっと目をそらした。 「うちのビルのテナントで、B to C なのは、一階に入ってる旅行代理店ぐらいなんだよね。後は対法人の会社ばかり。工藤さんとこも、そうでしょう?うちもそうだし」 坂本さんの口調が、さっきの歳の話あたりから、微妙に変化していた。 年下扱いが、くすぐったい。 「坂本さんとこは、企業向け研修でしたっけ」 「うん、そう。新入社員向け教育とか、そんなやつ」 「よく新人だった頃、仕事でやらかすたびに、上司から4階行って、勉強やり直してこい、とか言われましたよ」 「そういう使い方、されてたんだ」 そう言って、坂本さんは笑った。
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