Chapter 1

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「昼飯、食べましょう。時間大丈夫ですか?」 「ああ、うん。別に予定ないから」 あの日、食べに行くつもりだった喫茶店に行ってみることにした。 初めてなので普段の混み具合は知らないが、土曜のオフィス街にも関わらず、席は半分ぐらい埋まっていた。 もうすぐ平成も終わろうというのに、昭和な雰囲気の内装だった。調度品は比較的あたらしい感じだから、わざと昭和風の趣にしたのだろう。 おれも坂本さんも、ナポリタンとアイスコーヒーを注文した。 「ここ、会社から近いのに、来たこと無かったな」 そう言って坂本さんは、食事より前に出てきたアイスコーヒーにストローを差した。 銀色のタンブラーにミルクをたっぷり注いでさっとかき混ぜた。持ち上げると、結露が坂本さんの肘まで伝って落ちた。 「ブラックが好きなんだけど、最近歳のせいか、胃にくるんだよね。ミルクいれると、いくらかいいって言うだろう?」 なにも言ってないのに、坂本さんはそう言った。 見ていたのを見られてたのか、と恥ずかしくなった。恋愛スイッチは厄介だ。 「年上自慢やめてくださいよ」 ー自虐だよ、と言って彼は笑った。
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