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「迷ってる」
ナポリタンを食べる手を止めて、坂本さんは言った。
「病院に戻るつもりですか」
「重すぎるよな。生死に関わる選択したばっかりの人の側にいるのは」
また太陽が顔を出し、窓際に座ったおれの背中が熱くなってきた。
「原さんて、すごいな」
おれの肩越しに、坂本さんは外を見て言った。
「やっぱ・・」
どっち?
「やめとく」
そしてふたたび、ナポリタンを食べ始めた。
会計を済ませて外は出ると、むせ返るほどの暑さだった。坂本さんを家まで送る気満々で、パーキングまで歩いていると、急に坂本さんは立ち止まった。
「ごめん、工藤さん。やっぱ行くわ」
「じゃあおれも行きます」
「工藤さん、おれに付き合うことないから」
「お兄さんぶらないでくださいよ。おれ、平気ですから」
坂本さんが吹き出して笑った。
「そっか。じゃあ行こう」
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