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――これ、何の花の匂いだっけ……
どうして真夏のオフィス街に妊婦がいるんだろう?とか、いつもと違うエレベーターの中の匂いに、過去の記憶が刺激されたりで、すっかりナポリタンのことを忘れていた。
4階でエレベーターは止まった。
男が二人乗り込んできた。
上司と部下の会話をしていた。
この部下の男のほうと、この頃よく目が合う。朝このビルの前で。今日のような昼時のエレベーターの中で。退社したあとのビルのエントランスで。会社の隣のコンビニで。
こちらが気にしているのと同じくらい、向こうも意識しているのかどうか、最近、気にはなっている。
匂いのことやら、ランチのことやら、頭の中が思策で、ごちゃごちゃとしていた時、
いきなり背後で、ドサッと音がした。
振り返ると、妊婦がうつ伏せに倒れていた。
「どうしました!?」
急いでかがんで様子を見たが、すでに意識は無いように見えた。
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