Chapter 1

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「脳死…、ですか」 夕方、原さんから電話があった。 「じゃあ、赤ちゃんは?」 『とりあえず、母体の方を生命維持させて、頃合いを見て、切開で出産させるらしい』 熱中症とか貧血とか、その程度のことしか、頭になかった。 『母子手帳は持ってたんで、名前とか住所とかそういうのはわかったんだけど、まだ身内の方と連絡とれないんだ』 「おれ、帰りそっち寄りましょうか?」 『いや、これ以上は、通りすがりのおれたちに、できることは何もないよ。おれも、もう社に戻るとこだから。そっちも何も収穫なかったんだってね、坂本から聞いたよ。今日はお疲れ様』 「原さんこそ、お疲れさまでした」 電話を切って、どっと脱力感が押し寄せた。
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