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その結果がどちらでも、私はそれを祐ちゃんに伝える勇気が持てない。
仕事をしながらも気がつくと私の左手はおなかを抱きしめている。
どこかにちょっとつまづいただけで、あわてて態勢を立て直す。
ヒールのある靴ははけなくなった。
食事も気をつかうようになり、気のせいなのかにおいに敏感になっていた。
もう私は運命に身をゆだねようなんて思わない。
あの奇跡の夜が私にそのことを教えてくれた。
私は私の思いで生きていく。
祐ちゃんがいてもいなくても、私はこの子とともに生きていく。
そう思うようになってから、だんだん私の心は落ち着いていった。
いまの仕事をこれまで以上に丁寧にこなすようになった。
仕事の幅を少しでも広げたくて上司にお願いした。
残業も増えた。
お金を節約してお弁当を持参するようになった。
家事をできる限り手伝っていろいろ身につけることを考えはじめた。
結婚情報誌を買うより先に子育て情報誌を買った。
私の生活はこの子を中心に動きはじめていた。
でもまだ検査もしていないし、病院にもいっていない。
妊娠していないとわかったときのショックを想像しただけで恐ろしくなったからだ。
もう私はこの子なしではいられない。
妄想に妄想を重ねて、私はそんなところにたどり着いていた。
ひと月ぶりに祐ちゃんと会った。
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