172人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
第一章 祐一郎
これが夢ならさめないでほしいと思った。
目がさめると、こんなところで佳奈が眠っていた。
でも、こんなことは久しぶりだと、ずいぶん昔のことを思い出した。
小学生のころに佳奈の家で一緒に遊んでいて、いつのまにかリビングで眠ってしまったことがあった。
目がさめたときにそこがどこなのか、どうして佳奈が隣で眠っているのか、すぐにはわからず不思議に思ったものだ。
そのことを思い出すことすら久しぶりだった。
あれからずいぶんたったんだなあと思う。
あの頃はぽっちゃりしてかわいらしい感じだった佳奈が、中学生のころにはスラッとして、高校生のころには綺麗になっていった。
女子の成長に男子はついていくことなんてできない。
女子はいつのまにか女性になる。
いつものように佳奈と話しているのに、いつになくどきどきすることが増えたものだ。
友人のうらやましそうな視線に心の中では優越感にひたっていた。
社会人になってから佳奈は目が変わったと思う。
きらきらしていた目が凛とした輝きを放つようになった。
強くかっこよく美しく、そのことがまぶしくて、少し遠い存在に感じることもあった。
それでも佳奈は月に一度くらいは会ってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!