第一章 祐一郎

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佳奈はむずがるような声を出して、眉間にしわを寄せている。 おこしてしまったか? 佳奈はおきなかった。 それよりも、佳奈まで全裸になっていることを知ってしまった。 しかもこれ以上にないくらい密着している。 もう興奮のあまり、頭の血管が切れそうだ。 バクバク騒いでいる心音で佳奈をおこしてしまうのではないかと心配になる。 どうしてこうなったのかよりも、これからどうするかに気をとられてしまう。 どうしたいかならはっきりしている。 もう一度でいいから、佳奈の小さく丸いおしりをなでたい。 おこさずになでる方法はないだろうか? そうじゃない。 おしりに限らず身体のすべてに手をふれたい。 タオルケットをはがしてこの目に焼きつけたい。 違う、そうじゃない。 どうしたいかじゃなくて、どうすべきかを考えろ! 最優先は、佳奈をおこさないことだ。 佳奈が目を覚ましてこの状況を目にしたら、きっとショックのあまり泣き崩れてしまうだろう。 酔った勢いとはいえ、ふたりとも裸になって抱きあってしまったのだから。 だから佳奈をおこすことなく、服を着させてひとりで眠ってしまったかのように取りつくろうべきなのだ。 こんな尋常じゃないほどの興奮状態なのに、我ながら正しい方策を見出したものだ。     
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