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それなのに佳奈は俺を抱きしめてくれている。
でも、顔を背けてしまった。
それなら、俺にできることは?
俺は佳奈の背中に両手を回してそっと抱きしめた。
佳奈が「ああっ」と声を発した。
佳奈の身体の震えが、あそこに心地よい刺激をもたらす。
それから俺は佳奈に声をかけた。
「佳奈、こっちを向いて」
身体をびくっと震わせた佳奈は、しばらく動かない。
それからなにもいわずに両手の力を緩めると、頭を持ちあげこっちを向いてくれた。
佳奈は泣いていた。
薄暗い部屋の中で、佳奈の涙が光を返す。
それでも佳奈は目をあわせてくれない。
どうして泣いているのだろうか?
どうして目をあわせてくれないのだろうか?
少しおびえているようにも見える佳奈に、いつもの笑顔がなかった。
それはなにか悪いことをして叱られることを覚悟しているようにも見えた。
だから、そんなことないよ、といえばよかったのかもしれない。
でも、いまのこの状況があまりにも幸せだったから、夢でも見ているかのようだったから、ずっと伝えることのできなかった本当の気持ちを俺は思わず口にしていた。
「佳奈、愛しているよ」
そういってから、佳奈のおしりや背中をまさぐった。
佳奈は「ひっ」と小さく叫んだ。
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